サバ缶とボッコちゃん

青魚と短編小説をこよなく愛するコピーライターです。 ブログタイトルは時々変わります。

物陰からガッツポーズ

 

広告の仕事をしていると、

担当した商品には思いっきり情がうつります。

 

私の仕事は主には、

すでに売られている商品の立ち位置やメッセージを

時代や市場の動きに合わせてリフレッシュし、

新たに広告に仕立てるという作業ですが、

クライアント直で商品企画の一から入ることも多く、

MDから「今度こんなものを考えているのだけど」という相談をうけて

どんな風に市場に出すかを一緒に研究しながら、

こちらではアイデンティティとなる言葉やネーミングを考えます。

 

そうやって新しくなった子(商品やブランドです!)や

市場デビューした子(商品やブランドです!)のことは

ほんとうに可愛くてしかたありません。

 

先日、とあるヨーグルトをリニューアルする仕事があったのですが、

もちろんスーパーに行くたび売り場をチェック。

そうなると、商品の向きやらなにやら気になります。

横を向いているやつは全てきれいに正面向きに。

商品が少なくなっているとつい

「ちょっと〜減ってるんだけど〜在庫あんの?」的な顔で

店員さんを見たりしてしまいます。

 

ほぼ毎日陳列の向きを直していたら、警戒されたか

最近はきちんと置かれるようになりました。

結構売れてる感じだ…うれしいな〜。

でもきっとこれ、監視カメラにヨーグルトの向きを

(それも特定のブランドだけ)直す中年女として映ってるよね…

 

もちろん時々、2分や3分は売り場の隅に立って

買っていく人を観察していますよ。

手に取る人がいたら?

…それはもう小さくガッツポーズ!

 

 

 

 

母と娘 〜朝ドラ「ひよっこ」から

 

朝ドラ「ひよっこ」を見ている。

まだ始まって3週間だけど、

これは一種の ’バディもの’ ではないかと思った。

誰と誰の?というと、母と娘の。

www.nhk.or.jp

 

序盤の大事件とその顛末で、

出稼ぎ先の東京で行方不明になった夫を探しに行って

手がかりなく戻った母(木村佳乃)が

心配かけまいとこれまで黙っていた事の次第を

娘のみね子(有村架純)に告白するシーン。

「母さんはここで父さんを待ち続けるよ」。

涙ぐみながらこう言った母にみね子が答えたセリフが

「わかったよ」。

この瞬間に母と娘のスタンスが変化したことが見えてぐっときた。

 

さきの母に対しての答えは、

「うん」。

「そうだね」。

「私も待つよ」。

などいくつか考えられるけど、娘の答えは「わかったよ」。

このセリフはなかなかすごい。

このひと言にこもっているのは、

「わが家の状況はわかった。母さんの気持ちもわかった。

その上で私は私のできることをするよ、そう決めた」という決意表明だ。

これを言ったことで親と子供だった二人の関係は一部対等になり、

女性同士の信頼関係が誕生した、と思った。

 

子供が成長して庇護しされる時期が終わると、

母と娘には新しい関係が始まると思う。

それぞれ「女としてのタイプ」もちがうだろうし、

家族だから一緒にいたけど個人としては気が合わないとか。

だがこれまで母が注いだ愛情はしっかり娘の心の中に残り、

たぶん、生きるための磁石のようなものになっている。

(自分の場合は、悔しいことや理不尽なことがあった時、

「こんな思いをさせるために母は私を生んだのではないだろう」

と思って立ち向かったりします…)

また母は娘を分身のように感じて未来に放つのかも。

何度も励ましあったり口喧嘩をしたりしながら、

たとえ愛憎が入り交じっても、

親娘はかけがえのない同志になっていくのでは。

 

来週からドラマは東京編なので

また全然違う方向に進むのかもしれないが、

みね子の上京で母の木村佳乃はあまり出てこなくなっても

みね子の中にバディとして棲んで冒険を支えるんじゃないかな。

 

なんて勝手に想像しています。 

 

 

映画ショートレビュー1

 

暇さえあれば映画を観ていますが、観っぱなしで感動が走馬灯…

もったいないので忘れないうちに覚書。

(観た順・ネタバレあり・メモレベル)

 

The NET 網に囚われた男

(物語/漁の最中にうっかり流され南北の国境線を超えてしまった北朝鮮の漁師が、南で拘留された後帰国するまでの顛末。キム・ギドク監督)

国家社会的に不自由で貧しく、ただただ素朴と思われた北朝鮮の漁師が、

登場人物の中で最も洗練された人生観と健やかな身体を持っていた!

彼は劇中ずっと「王様は裸だ」と叫んでいるのだ。

帰国後の悲劇はその感受性ゆえ…そこが残酷だと思った。

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http://www.thenet-ami.com/

 

  

LA LA LAND 

(物語/女優の卵とジャズを志すピアニストが出会って恋に落ちるが、夢を叶えるために二人が選んだ道は…。ご存知大ヒットミュージカル。ジェイムズ・チャゼル監督)

話はよくある、踊りも歌もミュージカルとしてはイマヒトツ、

という評判もあるそうだけど、私にはとても響いた。

まず冒頭の、高速道路での群舞、ここですでに胸キュン。

お約束のラブストーリーに心地良く乗っかりつつ、

成功のきっかけとなる最後のオーディションの歌に号泣。

どんな職業でも、いつかもっと満足のいく自分に!と

もがいている人には等しく響く、胸が痛くなる歌詞…

Audition ~The Fools Who Dream (翻訳石田泰子氏・抜粋)/

おばは似ていた 無限の空と絵を輝かす夕日に

どうか乾杯を 夢追い人に たとえ愚かに見えても

どうか乾杯を 厄介な私たちに

おばは私に教えた 少しの狂気が新しい色を見せると

明日は誰にもわからない だから夢追い人が必要と

反逆者たちよ さざ波をたてる小石よ

そして乾杯を 夢見る愚か者に

どうか乾杯を 破れた心に

私が女優を目指した理由 おばと雪とセーヌ川

笑顔で跳んだおばは言った もう一度跳ぶと

(泣‥)

 

ラス前のパラレルワールド的演出もココロ憎い。

ちなみに二度目の観賞に大昔にダンスを習っていた母を連れていったら、

タップのシーンで座席でピョコピョコ脚を動かすなどして

めちゃくちゃ感激していた。 

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http://gaga.ne.jp/lalaland/

 

おとなの事情

(物語/カップル3組+1人のホームパーティースマホを公開し合うというゲームで次々明らかになるそれぞれの秘密と本性。パオロ・ジェノベーゼ監督)

男性4人は高校時代からの友人だけど女性同士はそんなに親しいわけでなく、

ふ〜んこの夫にはこういうタイプの妻が添うのか…など興味深い。

軽く破滅に向かっていく展開&会話の行間が面白いサスペンスだった。

夫婦で観るといいかな?モメるかな:)

そして、イタリア人って意外に(?)保守的&ケチなんだなと。。

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http://otonano-jijyou.com/

 

LIONライオン〜25年目のただいま

(物語/迷子になったインドの少年がオーストラリア人夫婦の養子となり幸せに成長するが、望郷の念捨てがたくGoogle earthで生家と母を探す実話。ガース・デイビス監督)

「世界にはこんなにも人があふれているのに私が子供を産まなくていい。

むしろ親のいない子の母親になる方がいい。」とは里親になった母のセリフ。

そうか、子供を産まなくても母親にはなれるのか、それもこんなに偉大な母に。

ということは母性は妊娠したら湧いてくるものじゃなく元から備わってるもの?

子供のいない私でも、これからでも、母になれるのか? 

そんなことを思った。

スラムドッグ$ミリオネア」で少年だったデヴ・パテルが

すっかりイケメンの大人になっていた! 

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http://gaga.ne.jp/lion/

 

 はじまりへの旅

(物語/森の奥でヒッピーのように暮らす一家が、入院後病死したママの葬儀へと向かうロードムービー。ピュアな彼らにもたらされる変化とは。マット・ロス監督)

インディペンデントとは?自由とは?を考えさせつつ、テーマは「卒業」。

家族って最小のローカル単位だから家庭は容易にガラパゴス化する。

ガラパゴスの中は楽園で、独自ルールで暮らしてきた家族は

知識や体力を身につければ強い動物としてそこでは生きていけても、

他者と折合うしかない社会では生きづらいんだな。

超大人として描かれて、厳しくムコを糾弾しながらも孫には

ありったけの愛情を注ぐじぃじ(死んだママのお父さん)が頼もしく見えた。

 

世俗という鎧は重いけれど必要だ。

ただその内側を柔らかく温かくしておけばいい。

森の奥で時折り鳴っていたシガーロスの音楽がまさにその感じ。

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http://hajimari-tabi.jp/

 

作家、本当のJ.T.リロイ

(物語/80年代に一世を風靡し時代の寵児となった美少年作家J.T.リロイの実体は中年女性だった。虚像を作った彼女の内面と経緯を追ったドキュメンタリー。ジェフ・フォイヤジーク監督)

二つの味がおいしい映画。

①なぜフェイクキャラを作ったかという解明部分。 

②コロッと騙されたセレブたちの滑稽と彼女の飄々の痛烈な対比。

 

悲惨な過去が彼女の逃避キャラを生み出したにしても、

書かれた小説は実績で、アイコンがフェイクという一点を除き活動も全て真実。

どんな経緯があってどんな形をとっても、才能はこぼれ出てくる。

「どうして世間はJ.T.リロイの存在を信じたと思いますか?」の問いに対し

「…それは私がそう言ったから。人は誰かが断言したことを信じるものよ」と。

このセリフは、昨今のいろいろを考えると怖い。

人は信じたいものを信じる。

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http://www.uplink.co.jp/jtleroy/

 

 

…これからもちょいちょいメモします:)

 

ひとの気を知りすぎて

 

前回書いた「忖度」と似た言葉に「斟酌」というのがある。

(ひとつ前の記事:ひとの気も知らないで - サバ缶とボッコちゃん

 

【斟酌(しんしゃく)】

(水または飲料などをくみわける意から)①あれこれ照らし合わせて取捨すること

 ②その時の事情や相手の心痛などをうう分に考慮して程よくとりはからうこと。

 手加減すること。③ひかえめにすること。さしひかえること。遠慮。辞退。

 〜広辞苑第五版

 

辞書を引いてみたら、思っていた以上の意味があった。

②程よくとりはからう はわかるとして、

③ひかえめにする。遠慮。辞退。と書いてある。

これは萎縮、に近いのでは。。。

 前回、コピーが炎上した例をあげましたが、

これでお客さんがCMや広告を取り下げることが通例になれば、

企画提案時から「斟酌」がまかり通って

気持ちに届く言葉を作れなくなりそう。

  

結局、他人の気持ちを想像して(ここまでは素敵)

わかった気になって(これは傲慢)、

かつ求められてもいないのに遠慮したりする(やりすぎ)

のは、コミュニケーションをつまらなくすると思う。

 

言われてもいないのにビビること、

ここまで言ったら賛否あるかも、を自主規制すること。

「忖度」は「斟酌」へのイントロになってはいけないねぇ。

だから新聞もテレビも、流行りの「忖度」という言葉は

「斟酌」と区別して正しく使ってほしい。

 

真面目か。。 

 

ひとの気も知らないで

 

最近「忖度」という言葉が流行って(?)る。

 

【忖度(そんたく)】

(「忖」も「度」も、はかる意)他人の心中をおしはかること。推察。

「相手の気持ちを〜する」 〜広辞苑第五版

 

このところは相手の圧を勝手に感じて便宜をはかった、

みたいな文脈で使われているけど、本来の意味は「推察すること」のみ。

先回りしてあれこれするのは「斟酌(しんしゃく)」だよね。

で、「忖度」の意味を正確に知ると、

コピーを作る時に私が大いに行っているのは忖度だなと思った。 

 

「読み手の心の中に入って書く」とか

「言ってほしいと相手が思ってることを言葉にする」とか

「頭が発火するくらいターゲットのことを想像する」など。

これらは先輩から教わったコピーライティングのコツで、

「一旦主観を後退させて他人の心によりそって書くべし」ということだけど、

実践はするものの成果を出すのはなかなか難しい。

 

共感コピーです、といっても

わかった気になっているだけということもちょいちょいで、

ターゲットはうれしくもなんともなく

響かない上にむしろ不快、ということもある。

例に出して申し訳ないのですが、最近だと

化粧品会社の「25歳からはもう女の子じゃない」や

電車マナー広告の「都会の女はみんなキレイだ。でも時々みっともないんだ」とか…

これらのフレーズは軽く炎上していた。

 

誰かを傷つけたのかな…

共感の幅がちょっと狭かったのかな…

なんとか記憶に残そうと語られた言葉なのに、

見た人は何かにひっかかってカチンときた。

その分届いているのだと思うし、

最近は受け取られ方も厳しいなぁと感じるけど、

商品やブランドに代って言葉を発する以上、

受けとられ方には鈍感でいられない。

ひとの気も知らないで、または知ったような気分になって

書いたと受け取られたコピーは、好かれず宙に浮くみたい。

 

だから「忖度」しまくる。

いまこの言葉は「悪いこと」みたいに使われている(ような気がする)けれど、

本来は、未知の他人とうまくコミュニケーションするための

まじめな行為だと思うのです。

 

一方で、

(続く) 

 

書きたいはうれしい

 

文章には、書かねばならないと書きたいがあると思う。

 

書かねばならないの筆頭は、いまなら仕事メールかしら。

「お世話になっております」や「メールありがとうございます」に始まり

ふさわしい内容が誤解なく伝わるように書く。

顔が見えない相手に粗相がないようにと神経を使うから、

時間もかかる上に自分のキャラもちょいちょい偽っていて心苦しい。

 

子供の頃なら読書感想文かしら。

私はこの感想文というやつが苦手で苦手で、

すごく面白かった本でも「感想文に書きなさい」と言われると固まってしまい、

話の筋を追ったようなつまらない文しか書けなかった。

今思えばコツみたいなものをつかんでなかったせいだと思うのだが、

じ〜んと来た時点がクライマックスで、

読み終わってしまうともう思い出したりすることが

面倒だったのだと思う。

 

コピーライターの仕事は受注で、分類からすると

「書かねばならない文章」になるのだけど、

「この事物を世に知らしめたい!」というお客さんの希望を

意気に感じてよっしゃ!と腕まくり、

「この部分をこう伝えたらいかが」と知恵をしぼる作業は

マジでめちゃくちゃ楽しくて、

あれはいかがか?これはどうでしょう?を一日中でもやっていられる。

これはつまり「書かねばらない」を「書きたい」に転換していて、

この転換の部分こそが「提案」になるという。

そう考えるとしあわせな仕事だなあ。

と、今ごろ気づく。

 

「ちゃんと自分の人生がのっかってる言葉は強い」

と言っていたのは誰だったかしら。

 

これはきっとそういうことなんだ。

 

 

チームワークのキラキラ

 

ホメ前提なので名前を出させていただきますが、

輸入食品雑貨の「KALDI」。

その三軒茶屋店がいつ行ってもすばらしい!

何がというと、スタッフが。

品揃えや陳列は他店同様なれどスタッフが全員が店を

楽しそうに!親切に!流れるように!

切り盛りしているだけでなく、

各人が使命感に溢れているというか。

 

行けばほとんど会えるハスキーボイスにメガネの小柄な女性が

リーダーだと(おそらく)思われるのですが、

彼女以下、全員女性のスタッフはいつもハキハキシャキシャキ。

ものを尋ねたら軽く世間話をはさんで教えてくれたり

在庫がなければ代替物を提案してくれたりと

それぞれオリジナルな話し方の接客で

うちの店が大好き!という感じが伝わってくる。

クリアな統率の下に個人のパフォーマンスが自由に発揮されている。

これは最良のチームワークなのではないか!?

買い物しているだけなのに、

そのチームワークのキラキラにこっちもなんか元気が出ちゃう。

クッキーやらチーズやらワインやらを抱えつついつも感心しています。

 

自由がほしくて会社をやめた自分なのに、

こんな「職場」はちょっと羨ましいなぁ。