サバ缶とボッコちゃん

青魚と短編小説をこよなく愛するコピーライターです。 ブログタイトルは時々変わります。

LUCKY

 

うれしい!

「今年の年賀状の文章よかったんでナレーション頼みます」ですって。

ほんとですよ。年賀状で仕事きたの初めてですよ!?

ありがたいことです。

というわけで、くだんの文章をこちらにも貼っておこうと思います。

(実はさっき日付操作して年頭に書いたテイで一度貼ったんですが、

やっぱり今日の正直日付でリポストすることにしました)

 

沢辺香’torch’2019新年のご挨拶。昨年よかった映画の話です:)

 

*******

 

男の名はLUCKY。毎朝5ポーズのヨガ。グラスに入れて

冷やしておくミルク。カウボーイハットに格子柄のシャツ。

散歩。91歳。「パリ・テキサス」はじめ名脇役として数々

活躍した俳優ハリー・ディーン・スタントン最後の映画が、

この一年ココロを照らしてくれていた。人生の最晩年を迎

え、初めて生について哲学する元兵士の爺。「上滑りした

会話より気まずい沈黙の方がいい」「孤独と一人は同じじ

ゃない」「俺がいなくなってもリクガメのルーズベルト

きっと生きてる 」「みんなには内緒にしといてほしいが

実は死ぬのは怖い」。誰の上にも時間は平等に流れている

ことや、青い空の下日常をつつがなくつづけられることの

ラッキーを、マリアッチの優しい響きとともに映画は教え

てくれた。91歳は自分には何十年も先だが、いつでもある、

は永遠には、ない。俳優という職業を生ききってスクリーン

の向こうに姿を消したスタントン爺の、こっちを見てニッと

笑ったラストは、乾いた希望に満ちていた。私をあたためて

くれた一本、「LUCKY」(ジョン•キャロル•リンチ監督作)。

自分もだれかやどこかを照らす一本の松明(torch)でありたい。

本年もどうぞよろしくおつきあいください。

 

f:id:akubikkuri:20190416110634j:plain