サバ缶とボッコちゃん

青魚と短編小説をこよなく愛するコピーライターです。 ブログタイトルは時々変わります。

明るすぎて見えない

 

今年のしし座流星群は、

ここ一週間くらいが最も見ごろだそうな。

夜23時前後にはじまるとニュースできいて、

遅い夕食後、できるだけ暗い場所を探して家を出る。

 

我が家は東京23区。

道には等間隔の街灯、公園も暗闇が生じない程度には照らされている。

安全なのはいいけど、星を眺めるときは人工の光が邪魔をする。

空を見上げたとき視界に光が入らない場所って

なかなかないんだな〜。

 

やがて、少し広い公園に、

木陰に入ればうまく灯りを遮れる場所をみつけた。

そこだってちょっとでも顔を動かすと

なんらかの明かりが目に入っちゃうけど、

まあよしとしよう。

こんもりした欅の木の脇に立ち、

広めに開いた葉の隙間からおもむろに夜空を見上げる。

 

「20分程度は眺めましょう」。

テレビではそう言っていた。

 

20分か…

長い…。

 

星はちっとも流れない。首も凝ってきた。

木のすぐ脇にあるゆるい階段に腰をおろして、

後ろに手をついて空を見上げる。

そのうち、頭の中を関係のない考えがぐるぐる回る。

 

(明るすぎて見えないのは星だけじゃないな。

人間世界でも、派手な見た目やアピール力のある人の後ろに

つい隠れちゃう地味な人っているよね。

んでその人が渋い輝き持ってたりって、むしろほとんどそっちだよね)

 

(明るい、は眩しい、につながって、

「目くらまし」方向もあるんじゃないか?

キラキラッ!感じヨスギ!には眩まされないように

気をつけなくちゃな…こないだも…ブツブツ)

 

(つまり明るいことがいい、ってわけでもないんだよ多分。

何でもクリアに見える、わかる、ことばっかり

ここんところ尊重されすぎじゃない?)

 

(にしても最近メガネが合ってないのかな?

経費で作るなら年内に検眼行っとこ)

 

…いつしか思考は星から彼方へ。

 

「寒っ!帰ろ」。

ちょっと離れたところにいた夫の声で我に返る。

流れ星は3つほど目撃したそうだ。

私には見えなかったよ。

世界は最近、明るすぎるのだよ!

 

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(写真は別日のもの)

 

 

そういうの好き、じゃなくてこれが好き。

 

人と距離をつめる方法のひとつに

「共通点を見つける」というのがある。

好意を持った相手が「いい」と言っているものに

「自分もいいと思う」と共感をしめす。

映画でも音楽でも小説でもサッカーチームでも。

ただ、親しくなりたいあまりそんなに共感していない事柄について

相手に合わせたことは…

もちろんある。

 

昔、つきあっていた人があるイラストを

好きだと言って見せてくれた。

誰が描いたもので絵が何だったかも忘れてしまったが、

これのどこがすごいかどこに惹かれるかを

その人は熱っぽく説明してくれた。

その時私はその絵にそう強烈な印象は受けず、

正直ふうん、という感じだった。

 

当時その人とはいろんな事情であまり会えてなくて、

私はちょっと不安だった。

だから絵を見せられた時、精一杯の気持ちでこう言ったのだ。

「こういう絵、すごく好き」。

すると彼は哀れむように私を見て言った。

「こういう絵、じゃなくて「この絵」が好きやねん」

 

その頃よく聴いていた

ストーンズの「Tatoo You」というアルバムに、

「Waiting on My Friend」という曲がある。

終盤の歌詞はこうだ。

♪ But I'm not waiting on a lady / でも俺は女を待っているんじゃないんだ

I'm just waiting on my friend / 俺はただ友を待っているんだ 

 

「こういう絵、じゃなくて「この絵」が好き」。

と言ったときのその人の視線を今でも思い出せる。

その瞬間私は、終わってたと悟った。

 

「Waiting on My Friend」は ”俺は女ではなく友を待っている” と歌っていて、

それは「互いを認め合える存在を待っている」という意味に取れ

(それが女でもいいじゃん、と今は思うけど)、

待たれてない自分を感じて辛かった。 

と同時に、心酔する芯のようなものを持っている

人間でありたいと、ほろ苦く刻んだ。

 

その後も仕事や社交の場で「そういう感じ、いいと思います!」と

当たり障りのない発言をしたことは何度かあって、

その度に「今「ふり」をしたな〜」と自己嫌悪に陥る。

そんな空気を読むような態度が正解かどうかは

そのうち結果が出てくるのだろうけど、

少なくとも「自己嫌悪正常!」と思い続けてはいきたいと思う。

 

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(※歌詞が、英語的に正しい waiting 'for' my friend ではなく

     wainting 'on' my friend なのは、当時移民に見られた表現を

    M.ジャガーが親しみの気持ちから使ったのだそうです) 

 

続けてもいいから嘘は歌わないで

 

ちょっと前のことだけど、

フジロックのとあるステージで心に残った言葉。

 

やっとフジの舞台に立てたよ!と叫んだ

初出演のバンドのボーカルが、ひとしきりMC。

結婚して子供ができて、嫁さんも仕事やめなきゃならなくなったのに

なかなか芽がでなくて、

このままバンドを続けていていいのかなと悩んでいた時に

嫁にこう言われたと。

「続けてもいいから嘘は歌わないで」。

 

そうだなーと思った。

もっというと、自分を表現する仕事に就いているなら、

思いと違うことを無理して歌わされずに続けられれば

多少貧乏でも幸せなんじゃないかって。

そりゃあ食べていかなければならないし、

子供がいれば育てなければいけないし、

キレイゴトばかり言ってはいられないと思うけど。

 

そんなことで、ふと胸を突かれたよという話。

単純?馬鹿?青い?

でもでもこの気持ちは仕事をする上での

芯になるのではないかと自戒した。

 

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消えた「かっこいい」

 

もう7月も終わりなんですって。

先月3月じゃなかったの!? …びっくりです。

2020年速すぎる!

 

…と書いてそのままにしていたのが早2ヶ月以上前。

今日から10月です。。

2020年速すぎる。ていうかもうすぐ終わる! 

文字通り失われた2020年

(というブログを書いている人はたくさんいるでしょうな。

年末12月にはどんな気持ちになっているだろう)。

 

今年はっきり変わってしまったなと感じる価値観はこれ。

いわゆる「かっこいいと目されていたこと」が

根っから揺らいでしまった気がする。

 

さりげなく流行を取り入れたファッション とか

羨ましがられるステキなものを所有 とか

羽振りのいい組織を率いているor所属 とか

華やかな交友関係 とか 

たくさんのフォロワー とか。

 

マスク&社会的距離が新常識になって

100%の安全は人と会わないこと(10月頭時点)だから、

自分時間をいかに快くすごすかにもっぱら腐心、

家族ともお互い気を使いつつ仲良くする。

そんな毎日に、

他人目線で可視化されてきた「かっこいい」は

色褪せてしまうみたい。

 

さりげなく流行を取り入れたファッション(外出しない)

羨ましがられるステキなものを所有する(見せる機会ない)

羽振りのいい組織を率いている(だから名刺減らない)

or所属(リモートのせいで不要不急人と認定w)

華やかな交遊関係(リモートでエア交遊)

たくさんのフォロワー(元々エア交遊だけどみんな疲れた)

・・・

そんなわけで、

見栄やマウントをまとった「かっこいい」は

急速に突然に、シュッッと音をたてて消えてしまった。

 

次はたぶん、

「好き」「気持ちいい」「面白い」「うれしい」と

自分が本気で思っているモノゴト時間を大切に続けていくこと。

それが新しく佳き「かっこいい」となっていくのではないかしらん。

そして、羨ましがらせたりマウント取ったりしないで

人には優しく:)

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いちばん怖いホラー

 

さっき、ものすごく怖い映画を観ました。


CURVE

https://vimeo.com/221821296

(目がさめると主人公は絶対絶命の空間に配置されていた)

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これは、一見してもらうのが早いのですが、

たった10分と短いのに汗が滲み鼓動が速くなり直視できず、、、

心身にかなりダメージをくらいました。

(ここで中断してぜひ先に鑑賞を。上記アドレス)

 

・・・

ホラー映画はわりと好きです。

わりと、というのはファンを公言するほど詳しくないけど、

話題作は大抵観るし怖そうだからと避けたりはしないレベル。

わたしの知る限り、ホラーのジャンルには

「ゾンビもの」「スプラッター(血糊が多い)」

「サイコ(人間心理が怖い)」「悪魔、儀式もの(エクソシスト

サスペリアやアリアスター監督関連等)」、

「コメディホラー」「不条理(なんか怖い)」

等々がありますが、

どれも楽しめるし、夜悪夢を見たりはしません。

 

ところが、冒頭の映画はものすごく怖かった…

レビューを読むと、私同様の感想もあるものの

そこまで恐怖におののいている人はそう多くない様子。

では、自分は何がそんなに怖かったのだろう?

少し考えてみました。

 

*閉所空間での逃げられない怖さ

*わけもわからず死ぬことへの怖さ

*すぐ諦めそうな自分への幻滅

*なんとかなるかもという微かな希望が浅はかと気づいている絶望

 

どれも「自分ごと化」?

つまり、「ゾンビがくる〜」とか「首が飛んで血がドバッ!」とか

「ストーカーが追ってくる!」「呪われる!」等なら

他人事のエンタメとして楽しめるものの、

このシチュエーションで自分ならどうする?

みたいな置き換え系になると、

体力や判断力に全く自信がないため

剥き出しの恐怖にゴリゴリ擦られるのだな…と思いました。

 

そうそう、以前観た、

倦怠期の夫婦が大人数のスキューバツアーで潜っているうちに

船に置いていかれて絶海でサメに囲まれる、という

映画(「オープン・ウォーター」。面白いです)も

ものすごく怖かった!

というのは、自分がかなづちで、

夫がXXしたら耐えられないから…(ネタバレ回避)。

 

つまり

*泳げない、体力ない

*閉所空間苦手

*生への執着心薄い

等々の自分の特質により、

「無理!」となるのが早いための恐怖だったのでしょう。

絵空事として見れないものが恐ろしいんですね。

 

というわけで、一番恐怖を感じるのは「絶体絶命もの」。

ホラー映画はともかくとして、

できれば死ぬまで、

 

絶体絶命状況には置かれたくないものです。

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シャッターを押したとき

 

最近SNSで流行してる投稿リレーで

「幼少期の写真をあげる」というチャレンジが回ってきたので

どれにしようかと子供時代の写真を探したら、

ほとんどよそ見してるか仏頂面ばかりで呆れた。

 

見ているうちに、一緒に写っている母が

どの写真でもカメラ目線なことに気づいた。

シャッターチャンスに一番いい顔できる人だったのだな…

なんて一瞬思ったが、ふと。

 

カメラを構えていたのは父だ。

娘を可愛く撮る気がなかったのではなくて、

父はただ母を撮っていたのだ。

シャッターを押したとき、

父は母を愛していたんだな。

 

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過去の自分を見に行った

 

世の中があまりにも早く変わりすぎる!

自分の歩みが遅くなってるから?年をとった?

もちろんそれは否めないけれど。

 

新型コロナという未知のウイルスが瞬く間に世界にひろがって、

半年もしないうちにこれまでの価値観や経済活動や建前をぶっ壊しつつある。

こんな誰も読んでいない個人ブログでもこの状況を(その気分を)

無視して何か書くのが難しく、手が止まる。

ただでさえここ数年、世界のムードにも自分の気持ちにも

影さすことが増えているのに…

 

昔はどんなこと書いてたんだろう?

そう思って、やめて10年ほどもたつmixi日記を読みに行ってみた。

期間は2005〜2012年。

2010年以降はほぼ書いてないので、2008年までの丸4年、

NY同時多発テロ後〜リーマンショック経由〜東日本大震災前の

自分の気持ちと毎日は…?

2005年からいくつか貼ってみます。

 

 

(ココカラ)↓

 

思い出しボヤキ−6 薬の売人  20050705

でっかい口内炎ができてます。

4~5日前に「大きなったらやばいな~」

と思ってたら、みるみる成長。

今や火口直径約1cmのヘニーデ型火山のよう。

熱い物、酸っぱい物、辛い物、爆笑などで激痛。

もうあかんと思い、薬を買いに渋谷の三千里薬局へ。

             

口内炎がこんなにでかくなりました」。

お行儀悪いかもしらんが

何となくちゃんと見せた方がいい気がして、

イィ~っと口を引っ張って患部を薬剤師に。

その薬剤師、いかにも渋谷センター街前らしいというか、

ロン毛オールバックの酷薄そうな若い男。

白衣着てなかったらホスト!?、っちゅーキャラ。

「あ~立派。じゃあこれ塗って」。

チラリと患部を見て軽い動作で軟膏を出す。

ガサガサと薬を包みながらさりげなく切り出す彼。

「…ちなみにどっから見ても癌だぜ、って人が

口内炎です~とかってたまに来ますねぇ」

「!癌!?」

「そう。先が真っ黒いのはね、口腔癌。

そういうのに口内炎の薬塗ってもダメだよねぇ」

「ひ~!これ、違いますよね」

「あなたのは白いから。れっきとした口内炎です。」

 

…ドンヨリ。も~何でそんな話すんだよっ。

前より痛くなった気がする…

この男、絶対私より10は年下だけど

なんかいたぶられた気がするよう。

やっぱ渋谷の売人は悪魔だ。

 

 

ニッポン国の習慣 20050930

「お待ち」。

オーダーしてた金目鯛のカシラが

ようやく焼き上がった。

 

どん!と置かれた皿には、真っ赤な金目のでかい頭。

さっそくエラ周辺や鼻の頭、コロンと真っ白な

目玉の周りなんかを箸でせせりほじって食べる。

特においしいのは、眼の裏のトロトロのところ。

掬ってみると、おおっ、結構でかい。

直径4cm位のコロイド状の輪っかが

べろんとお箸から垂れ下がる。

じゅるるるっ。

「ここ、食べると視力がよくなるよん~」

なんつって。

 

まわりを見ると、落ち着いた雰囲気の

居酒屋らしい居酒屋は、ほぼ満席。

われわれと同時に頼んでたらしい人々のところにも

金目のカシラが行き渡って、みんな静かに

身をせせっている。

ややあって、メガネをかけていた人々が三々五々、

かけていたメガネを頭の上に乗せあげる。

私の連れも「あぁ~うま」と目をぱちぱちさせながら

黒いメガネのフレームをぐいっと額の上へ上げた。

 

隣席で飲んでいた外国人が驚いてキョロキョロする。

「Why?」なんつって。

あのですね、みんな魚の目のまわりとか食べると

メガネの度が合わなくなるんスよ。

エス、一瞬眼がよくなるからデス。

「Oh,I see.」

外国人深くうなづく。

 

出口でお勘定している人がいる。

彼は、財布をしまうとおもむろに頭上のメガネを

再び鼻にかけなおして出て行った。

金目トロトロの視力回復効果は、

ほぼ1時間で消えるというのが定説。

日本の居酒屋ではほんと、よく見かける光景ですよね。

 

・・・なんつって。

昨夜の飲み屋でのヨタ話。

 

 

風邪とおばあさんとみかん 20051216

また風邪をひいちゃった。

日曜日にマッサージに行ったら担当の人がマスクをしていて

ふんぱつして1時間やったらすっかりうつった(と思う)。

風邪ひいてる時は客商売はあかんて。まじで。

首のコリも取れたし、体操のしかたもていねいに教えてくれて

いい人だったんだけどなあ。

 

会社の入室用ICカードを道で落とした。

ら、朝携帯に電話があって、

ベルコモンズの裏に住んでいるというおばあさんが

拾ってくれていた。お礼の紅茶を持って取りに行く。

待っていてくれたのは、声で想像していたよりも

ずっと年をとった細くて小さなおばあさんだった。

お礼を言ってしばらく話してそこを辞去しようとした時

「これを機会に・・・」と彼女は言いかけた。

私も「はい」と答えてすぐ黙ってしまった。

カードケースに名刺を入れていたので

電話がかかってきたのだが、

ちょっと考えると、それごと返してもらったから

彼女からもう私をたどる手立てはない。

それに二人とも気がついてしまったからだ。

私は彼女の住所を覚えているので訪ねていくことはできる。

だけど。

何をきっかけに行くのか?

行く気持ちになる時が来たとしてそれってどういう時なんだろ?

だけどなぜ私はもう一度名刺を渡さなかったのか?

または、渡そうかと一瞬でも思ったそのことの方が無責任なのか?

あとでいろいろ考えてやるせなくなった。

 

昨日は某プロダクションさんのお呼ばれ忘年会。

その前にも用事があり、夜も10時を過ぎてから

慌ててみかんをお土産に買って駆け込んだ。

みかんはそのプロダクションの近所のお店の。

値段もバレバレだし大きいだけでレアものでもないし、

本当に私ときたら気がきかないことはなはだしい。

この会に一人で行くのは初めてで、

広い会議室の中にはよその代理店の方や

有名クリエイターの方がわんさといて、怯む。

仕事でお世話になっているプロデューサーが

そばに来てくれて、いい年して人見知りの私の相手を

ずうっとしてくれた。

有り難かった。

 

善意とは何だろうか。

なんてことをうっすら考えた一週間でした。

 

 

ずるいぞ全員片思い 20050422

今、テレビでアニメのハチクロハチミツとクローバー

をやっていました。

お話は、美大を舞台にそれぞれが恋の花を咲かせつつ

微妙に業界(建築業界、デザイン業界など)裏話が入る、

ほどよく現代的な、オタク志向もちょっと満足するラブコメです。

 

このアニメのキャッチフレーズは

「全員片想い」というのです。

なかなか共感できます。

きっとそれは「全員」というところに起因するのでしょう。

このアニメ(テレビの)のそこがキライです。

みんな平等、という感じがうさん臭いです。

 

現実はきっと違います。

簡単に両想いになる人と、いつまでも片想いの人が

ほとんどだと思います。

 

↑(ココマデ)

 

 

最後のはちょうど15年前の今日。

元気よく率直に、一生懸命楽しんで書いている。

新型コロナ禍の前を生きてた自分か…

こりゃ〜また元気出さなきゃね!