サバ缶とボッコちゃん

青魚と短編小説をこよなく愛するコピーライターです。 ブログタイトルは時々変わります。

映画ショートレビュー1

 

暇さえあれば映画を観ていますが、観っぱなしで感動が走馬灯…

もったいないので忘れないうちに覚書。

(観た順・ネタバレあり・メモレベル)

 

The NET 網に囚われた男

(物語/漁の最中にうっかり流され南北の国境線を超えてしまった北朝鮮の漁師が、南で拘留された後帰国するまでの顛末。キム・ギドク監督)

国家社会的に不自由で貧しく、ただただ素朴と思われた北朝鮮の漁師が、

登場人物の中で最も洗練された人生観と健やかな身体を持っていた!

彼は劇中ずっと「王様は裸だ」と叫んでいるのだ。

帰国後の悲劇はその感受性ゆえ…そこが残酷だと思った。

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http://www.thenet-ami.com/

 

  

LA LA LAND 

(物語/女優の卵とジャズを志すピアニストが出会って恋に落ちるが、夢を叶えるために二人が選んだ道は…。ご存知大ヒットミュージカル。ジェイムズ・チャゼル監督)

話はよくある、踊りも歌もミュージカルとしてはイマヒトツ、

という評判もあるそうだけど、私にはとても響いた。

まず冒頭の、高速道路での群舞、ここですでに胸キュン。

お約束のラブストーリーに心地良く乗っかりつつ、

成功のきっかけとなる最後のオーディションの歌に号泣。

どんな職業でも、いつかもっと満足のいく自分に!と

もがいている人には等しく響く、胸が痛くなる歌詞…

Audition ~The Fools Who Dream (翻訳石田泰子氏・抜粋)/

おばは似ていた 無限の空と絵を輝かす夕日に

どうか乾杯を 夢追い人に たとえ愚かに見えても

どうか乾杯を 厄介な私たちに

おばは私に教えた 少しの狂気が新しい色を見せると

明日は誰にもわからない だから夢追い人が必要と

反逆者たちよ さざ波をたてる小石よ

そして乾杯を 夢見る愚か者に

どうか乾杯を 破れた心に

私が女優を目指した理由 おばと雪とセーヌ川

笑顔で跳んだおばは言った もう一度跳ぶと

(泣‥)

 

ラス前のパラレルワールド的演出もココロ憎い。

ちなみに二度目の観賞に大昔にダンスを習っていた母を連れていったら、

タップのシーンで座席でピョコピョコ脚を動かすなどして

めちゃくちゃ感激していた。 

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http://gaga.ne.jp/lalaland/

 

おとなの事情

(物語/カップル3組+1人のホームパーティースマホを公開し合うというゲームで次々明らかになるそれぞれの秘密と本性。パオロ・ジェノベーゼ監督)

男性4人は高校時代からの友人だけど女性同士はそんなに親しいわけでなく、

ふ〜んこの夫にはこういうタイプの妻が添うのか…など興味深い。

軽く破滅に向かっていく展開&会話の行間が面白いサスペンスだった。

夫婦で観るといいかな?モメるかな:)

そして、イタリア人って意外に(?)保守的&ケチなんだなと。。

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http://otonano-jijyou.com/

 

LIONライオン〜25年目のただいま

(物語/迷子になったインドの少年がオーストラリア人夫婦の養子となり幸せに成長するが、望郷の念捨てがたくGoogle earthで生家と母を探す実話。ガース・デイビス監督)

「世界にはこんなにも人があふれているのに私が子供を産まなくていい。

むしろ親のいない子の母親になる方がいい。」とは里親になった母のセリフ。

そうか、子供を産まなくても母親にはなれるのか、それもこんなに偉大な母に。

ということは母性は妊娠したら湧いてくるものじゃなく元から備わってるもの?

子供のいない私でも、これからでも、母になれるのか? 

そんなことを思った。

スラムドッグ$ミリオネア」で少年だったデヴ・パテルが

すっかりイケメンの大人になっていた! 

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http://gaga.ne.jp/lion/

 

 はじまりへの旅

(物語/森の奥でヒッピーのように暮らす一家が、入院後病死したママの葬儀へと向かうロードムービー。ピュアな彼らにもたらされる変化とは。マット・ロス監督)

インディペンデントとは?自由とは?を考えさせつつ、テーマは「卒業」。

家族って最小のローカル単位だから家庭は容易にガラパゴス化する。

ガラパゴスの中は楽園で、独自ルールで暮らしてきた家族は

知識や体力を身につければ強い動物としてそこでは生きていけても、

他者と折合うしかない社会では生きづらいんだな。

超大人として描かれて、厳しくムコを糾弾しながらも孫には

ありったけの愛情を注ぐじぃじ(死んだママのお父さん)が頼もしく見えた。

 

世俗という鎧は重いけれど必要だ。

ただその内側を柔らかく温かくしておけばいい。

森の奥で時折り鳴っていたシガーロスの音楽がまさにその感じ。

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http://hajimari-tabi.jp/

 

作家、本当のJ.T.リロイ

(物語/80年代に一世を風靡し時代の寵児となった美少年作家J.T.リロイの実体は中年女性だった。虚像を作った彼女の内面と経緯を追ったドキュメンタリー。ジェフ・フォイヤジーク監督)

二つの味がおいしい映画。

①なぜフェイクキャラを作ったかという解明部分。 

②コロッと騙されたセレブたちの滑稽と彼女の飄々の痛烈な対比。

 

悲惨な過去が彼女の逃避キャラを生み出したにしても、

書かれた小説は実績で、アイコンがフェイクという一点を除き活動も全て真実。

どんな経緯があってどんな形をとっても、才能はこぼれ出てくる。

「どうして世間はJ.T.リロイの存在を信じたと思いますか?」の問いに対し

「…それは私がそう言ったから。人は誰かが断言したことを信じるものよ」と。

このセリフは、昨今のいろいろを考えると怖い。

人は信じたいものを信じる。

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http://www.uplink.co.jp/jtleroy/

 

 

…これからもちょいちょいメモします:)