サバ缶とボッコちゃん

青魚と短編小説をこよなく愛するコピーライターです。 ブログタイトルは時々変わります。

エクソシストの思い出

 

この夏は一本くらいホラー映画を観ようかと思う。


私が初めて子供同士で観に行った映画は

エクソシスト」だった。

確か小六の夏で、封切館ではなく、

もう二番館にきていたようなタイミングだった。

阪急宝塚線の、うちの最寄駅のひとつ隣の駅前の、

さびれた商店街の中の、小さい映画館。

仲良しの友と二人で観に行った。

 

その頃は映画のCMなんかやってなかったから、

多分小学館の学習雑誌やコミック誌なんかの

紹介記事に載っていたのだと思う。

大評判になった「エクソシスト」だけはもう、

どうしても観たくて観たくて、

親に行かせてほしいと頼んだのだ。

その年私たちは中学受験をすることになっていて

同じ塾にも通っていたのだが、

受験勉強中の息抜き、ということで

双方の親から許しが出たのである。

 

ご存知の通り「エクソシスト」は、

少女にとり憑いた悪魔を神父が祓う物語。

主人公・リーガンの首が180°回転したり

口から緑のドロドロを吐いたり

神父が悪魔と闘って苦悶しまくるシーンなどは

もちろんちゃんと子供らしく怖かったが、

一番恐ろしかったのは、冒頭の、

どこか異国の遺跡から発掘される悪魔の像。

確か数秒のシーンだったが、

この「何か嫌なもの」「禍々しい」「ヤバい」感、

これだけは、数十年たった今でも忘れられない。

絶対に見てはいけないものを見てしまった感じがした。

 

その日の映画館はとてもすいていた。 

観終わって映画館を出るともう薄暗く、子供心に

「陽の光を見ないまま帰るのはいやだなぁ」と思った。

悪魔に負けてしまうのではないかと思ったのだ。

その夜は枕元の、赤ちゃんの時から持っているぬいぐるみが

どうしても悪魔に思えてしまい、

夢うつつにうなされて眠れず、これまた初めての不眠体験。

そのあと日本はなんだか海外ホラーブームになって

大学卒業までに私は何本も怖い映画を観るのだが、

不眠と悪夢に苦しんだのはこの「エクソシスト」だけである。

 

その日、私と友人の二人ともが

母親が作った夏のワンピースを着ていたこと。

映画館に入る時にぎゅっと手をつないでいたこと。

そんなことまではっきり覚えているのはなぜだろう。

なんかわからないけど怖いという気持ちに好奇心が勝ってしまう、

今に至るも変わらない、自分の基本性格。

一緒に怖いものを見た彼女。

エクソシスト」の記憶とともに、

暗い映画館に座っていた二人の女の子の姿もよみがえった。

 

そんなわけでこの夏は、

久しぶりに怖い映画でも観ようかと思ったのです。