サバ缶とボッコちゃん

青魚と短編小説をこよなく愛するコピーライターです。 ブログタイトルは時々変わります。

気持ちがひやりとした日のこと

 

いくらか前のことなので、そろそろ書いてもよかろうな。

 

その頃しばらく感情的にあまりうまくいっていなかったスタッフと、

ある日、お客さんに同行した帰りに少し打合せすることになった。

お客さんからの最寄駅は、

歩いてすぐだけど乗換えが少し複雑になる線の駅と

だいぶ歩くけど乗換えは一回ですむ線の駅の2つがあり、

ランチやお茶の時はいつもどちらかの駅近の店に入っていたので、

その日もどっちにしようかという話になった。

その人も「どちらでも」ということだったので、

とりあえずすぐ入れる店で昼食をとった。

 

探り合うような雰囲気でしばらく当たり障りのない話をしてから

避けられない本題に入り、言い争いにはならなかったものの

気持ちの共有は進まないまま、その時間は終わった。

会計を済ませて店を出て、これまではほとんど一緒に使っていた

乗り換えがシンプルな方の駅に向かおうとしたら

その人は、

「今日はこのあとこちらに用事があるので」と言って

もう一つの路線の方に去って行った。

 

別れてしばらく独りで歩いているうちに、ふと気づいた。

 

食事前その人は確か「どちら(の駅)でも〜」と言っていたのだ。

別れて歩く方を選んだということは、

これ以上こちらと一緒にいるのが嫌でそう言ったのだろうと思った。

嘘というほどのことでもない。

正直、別れ際にホッとしている自分もいた。

けれど、それは薄く冷たい金属のようなものが心にさしこまれたように

ひんやりする瞬間だった。

 

先方もそう感じているだろうか。

 

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